
人材ビジネスを展開する企業は国内に多数存在しますが、総合人材派遣を謳う企業も建設業界にはほとんど注力していないのが現状です。それは、国や地方の公共事業が減少していることと、事業内容自体に専門的な要素が高く、適正人材を提供することが難しいためと思われます。
当社は、その建設業界に特化して人材ビジネスを展開している唯一の株式上場企業です。実は、建設業界は「受注時期が不確定」「異なる建築現場」「短い納期ニーズ」「労働集約的」な産業と言われ、「必要な時期に」「必要な期間だけ」「必要な数」の人材を求めているのが実状です。
まさに、アウトソーシングに最も適している産業なのです。もともと当社は設計事務所として発足し、さらに高品質な施行図面の作成を大量、迅速に供給できるシステムを構築したことで、多数のお客様から信頼をいただきました。また、現場の施行管理ができる専門の技術者を多数育成してきたことで、建築現場をトータルで支える体制ができていました。創業以来のこうした礎があったからこそ、現在の建築派遣というマーケットを創成することができたのです。
基本的に建設産業は成熟したマーケットです。しかし、そこで働く人の数は、総合建設を手掛ける大手企業が大幅な人員削減等を実施してきたこともあり、恒常的に不足しています。そのため、建設アウトソーシングへの要請は継続的に強く、特に施行管理技術者に対するニーズは極めて高いと言えます。当社は、社員のほとんどが技術者であり、現状はフル稼働の状態です。
現在当社は、建築現場への技術者派遣を中核事業として、事業資源の大半を建設アウトソーシング事業に投入していますが、5年先、10年先を見据えて、社会性が高い事業領域に進出してまいります。社会性が高い事業とは、社会的なニーズが高く、今後成長が見込める事業ということです。
具体的には、2009年10月に設立したグループ会社の(株)我喜大笑が展開する保育園事業と、2010年7月設立の(株)夢真メディカルサポートが展開する医療ビジネス事業に進出しています。保育士派遣、医療人材派遣といった特色ある派遣事業から派生した事業分野で、どちらも政府による規制が存在し、一気に成長拡大という訳にはいきませんが、時間をかけながらコツコツと丁寧に進化させていく方向で、社会的なニーズに応えてまいります。
さらに、本年1月には(株)ユニテックソフトの株式を取得し、ITソリューション事業に参入しました。IT産業も建設業界と同様に人材の流動化が激しく、プロジェクトごとに必要となる人材の量や技術分野が大きく変動します。
大手企業といえども最大のプロジェクトにあわせて常に人材を確保しておくわけにはいかず、アウトソーシングの必要性が求められています。当社グループでは、これまで建築技術者分野で培った高度な人材派遣のノウハウを、システムエンジニア派遣分野でも活かして、高付加価値の人材提供を実施してまいります。
建築分野において求める人材の理想像を掲げ、人材採用時に絞込みをかけるという考えはございません。当社の場合、それぞれの現場におけるオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)で徹底的に教育し、高度な技術を身につけることで自身の付加価値を高めさせるという考え方が主流です。建築現場のサポートという職務のため、マニュアル的に画一的な教育よりも、現場での時間の中で当社の社風や方向性を学んでいただくというのが基本的な姿勢です。人材採用の間口をできるだけ広げ、OJTによる社員教育によって、高度な技術者集団を形成することを目指しています。
企業価値向上のために、当社はまだまだ規模の成長を目指しています。そのため、建築派遣・技術派遣など本業の周辺に存在する企業群へのM&Aは常に考えています。案件は個々別々に異なるので一概には言えませんが、「相乗効果」と「収益が出る」という点がポイントであり、基本中の基本です。価格についてはなかなか微妙な問題ですが、「利益が出せる相手先」であるならば、世間で言われているような価格でなくとも意欲的なM&Aの対象として考えています。どの経営者も、自社の従業員・株主・取引先の幸せを追求しています。M&Aの結果、相乗効果によって互いの企業がその方向性を高めることができ、かつ収益性を拡大させることで、規模と効率の拡大を実現させることを目指します。
こうした中、本年4月、(株)フルキャストホールディングスとの間で、同社傘下の製造業技術者派遣を手掛ける(株)フルキャストテクノロジーへのTOBが合意に至りました。当社の最大の強みである「高付加価値の人材派遣」をさらに追求・拡大した延長線上で、建設業と製造業の高度な技術者派遣の相乗効果を発揮し、将来的に当社の2本柱に育てていくことを目的としています。
本年3月に発生した東日本大震災により被災された地域の皆様、および関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。まだまだ予断を許さない状況は続いておりますが、被災地が一日も早く復興することを心から願っています。
当社グループにつきましては、人的被害、建物および生産設備等への被害はございませんでした。
震災への復興対策として当社は、震災直後の3月25日に復興支援拠点として仙台営業所の開設を決定しました。
以前、仙台に営業所を構えていた時期があり、土地勘などもあることから、どこよりも早く復興拠点の立ち上げに踏み切りました。現地での職を失った方の採用を強化し、就職から入っていって復興にお役立ていただければ、ということを考えました。また、当社の建築技術者派遣の拠点ができることで、就職支援とともに、当社が積極的に地域の復旧・復興に参加することが可能となります。さらに、そうした方々に当社の高度な技術を身につけていただき、将来的には首都圏などでもご活躍いただけることを期待しています。
私は先を読むのが大好きです。3年先のことを考えて、現状を踏まえつつ「今」手を打っています。今の業績は、3年前という過去からの発想や蓄積が現在に結びついているということです。そして今の努力は、蓄積して3年後の業績に必ずつながっていると考えます。
さらに10年先を考え、気配りをしながら四方に手を打っていきます。自分が考えた構想に沿って準備をし、それを成就させることが事業の真髄と思っています。常に新たな業務・新たな展開への目標設定をするために、日常の段取りを重ね、企業価値、株主価値の向上に努めてまいる所存です。
今後とも株主の皆様にはご理解とご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
インタビュアー紹介
櫻井 英明
株式新聞Weekly編集長から経済・株式キャスターに転身。
ラジオNIKKEIやMXテレビなどで数多くの番組を担当し、経済や株式投資に関する著書も多数。